成年後見を始める理由の93.4%は預金の管理。それでも本人が亡くなるまで終われなかった
利用者は25万9,901人で、認知症の人471万人の5%にとどまる。6月17日に成立した改正民法で、後見と保佐は補助に一元化され、必要がなくなれば終われるようになる
2026-09-12
93.4%
申立ての動機が預貯金の管理や解約(2025年、複数回答)
申立ての93.4%は預貯金のため
成年後見の申立ては、2025年の1年間で4万3,159件あった。 最高裁が3月に公表した集計には、家庭裁判所に申し立てた理由が並んでいる。
複数回答で最も多いのは、預貯金の管理や解約の93.4%。 次いで身上保護が74.2%、介護保険契約が45.7%、不動産の処分が36.3%、相続手続が25.6%と続く。
並べてみると、制度の入口はほとんどが目の前の手続きだと分かる。 親の口座から入院費を払いたい、施設の契約をしたい、実家を売りたい。 銀行や役所の窓口で「後見人を立ててください」と言われ、そこで初めて制度を知る。
本人が自分で申し立てた割合は24.8%で、残りは家族などが動かしている。 本人が望んで始まるというより、手続きが止まったから始まる制度だ。
ところが、その手続きが済んでも制度は終わらなかった。
成年後見を申し立てた理由(2025年、複数回答)
出典:最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況(令和7年1月〜12月)」
利用者26万人と、認知症471万人
2025年12月末時点の利用者は25万9,901人。内訳はこうなる。
- 後見 18万828人
- 保佐 5万8,162人
- 補助 1万8,078人
- 任意後見 2,833人
厚生労働省の推計では、2025年の認知症の人は471万6千人。 制度を使っているのは、その5%ほどにとどまる。
伸び方も緩やかで、利用者は前年から2.3%増、申立ては3.2%増だった。
本人の状態に合わせて支援の範囲を決める「補助」は7.2%増と伸び率が高い。 それでも人数は1万8千人で、全体の7%にすぎない。 実際に使われてきたのは、判断能力がほとんどない人に権限をまとめて与える後見のほうだ。 元気なうちに自分で相手と範囲を決めておく任意後見は、2,833人しかいない。
認知症の人と、成年後見を使っている人
出典:厚生労働省の認知症有病率推計(2025年)、最高裁判所事務総局家庭局(2025年12月末)
終わらない期間と、続く報酬
広がらない理由の一つは、始めたあとの期間にある。 一度始めると、本人の判断能力が戻らないかぎり、亡くなるまで続く。
その間、後見人には報酬が発生し、本人の財産から支払われる。 東京家庭裁判所が示すめやすは月2万円。 管理する財産が1,000万円を超えると月3万円から4万円、5,000万円を超えると月5万円から6万円になる。 月2万円でも、10年続けば240万円だ。
2025年に選ばれた後見人は、親族が16.4%、司法書士や弁護士などの専門職その他が83.6%を占める。 親族を希望して申し立てても、誰を選ぶかを決めるのは家庭裁判所で、その決定に不服は申し立てられない。
入口の用事は一回でも、費用と関与は本人が亡くなるまで残る。 預貯金の解約のために終身の支援を受け入れるかどうか。 この重さが、利用をためらわせてきた。
成年後見の利用者25万9,901人の内訳(2025年12月末)
出典:最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況(令和7年1月〜12月)」
改正民法は終わり方をつくり直した
この設計は、6月17日に成立した改正民法で見直された。公布は24日。
- 後見と保佐をやめて「補助」に一元化する
- 必要な事項だけを対象にする「特定補助」を新設する
- 必要がなくなったと家庭裁判所が認めれば終了できる
施行は公布から2年6か月以内で、遅くとも2028年12月までに始まる。
預貯金の解約という一つの用事のために、終身の支援を受け入れる必要はなくなる。 そのぶん、判断の重心は家庭裁判所に移る。 いつ始めていつ終えるか、どの範囲を任せるかを、事件ごとに決めることになるからだ。
年4万3,159件の申立てに、終了と範囲を見直す判断が上乗せされる。 後見人の8割超を占める専門職も、期間が区切られれば引き受け方が変わる。
利用が5%から動くかどうかを決めるのは、条文よりも、家庭裁判所と担い手をどれだけ置けるかだ。 施行までの2年半で体制が整わなければ、終われる制度になっても、窓口で言われて始まる入口は変わらない。