独自分析
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5,783億円で造った北海道新幹線、JRが払う使用料は年1.14億円

5,783億円で造った北海道新幹線、JRが払う使用料は年1.14億円

整備新幹線の使用料は建設費ではなく「増えた収益」で決まる。7月31日のとりまとめは、開業30年で終わるはずだった支払いをもう30年延ばす方向を示した

2026-08-19

1.14億円

北海道新幹線 新青森〜新函館北斗の年間貸付料

最初の30年が終わる2027年秋

北陸新幹線の高崎〜長野が開業したのは1997年10月。整備新幹線として最初に走り出した区間だ。

この区間でJR東日本が払っている使用料は年175億円。受け取るのは、線路や高架を保有する鉄道・運輸機構(JRTT)で、制度上は「貸付料」と呼ぶ。

整備新幹線は「上下分離」で造られている。施設はJRTTが持ち、JRは列車を走らせて貸付料を払う。JRは建設費そのものを負担しない。建設費のうち貸付料などで賄えない分は、国と地方が2対1で分け合う。新幹線が通る都道府県は、開業後ではなく造る段階でお金を出している。

契約期間は開業から30年。高崎〜長野はその期限が2027年9月末に来る。開業済みの9区間のうち、期限を迎えるのはここが最初だ。

国土交通省の小委員会は7月31日、31年目以降の方向性をまとめた。貸付期間はさらに30年、通算60年とすることを基本に考えるべきだとしている。

変わるのは払う額ではなく、払い終わる時期だ。

整備新幹線でJRが払う年間貸付料(開業区間別)

出典:国土交通省「今後の整備新幹線の貸付のあり方に関する小委員会」とりまとめ参考資料(2026年7月31日)

事業費と連動しない年175億円

貸付料の額は、建設費から逆算していない。計算の出発点は「受益」だ。新幹線を造った場合の収益から、造らなかった場合の収益を引き、その差を開業後30年分ならして年額にする。

だから事業費と貸付料は連動しない。区間ごとに並べると差がはっきり出る。

  • 北陸新幹線 高崎〜長野:事業費8,282億円に対し年175億円
  • 北陸新幹線 金沢〜敦賀:事業費1兆6,779億円に対し年93億円
  • 西九州新幹線 武雄温泉〜長崎:事業費6,197億円に対し年5.1億円
  • 北海道新幹線 新青森〜新函館北斗:事業費5,783億円に対し年1.14億円

30年分を合計して事業費と比べると、高崎〜長野は63%、新青森〜新函館北斗は0.6%。

**同じ制度、同じ30年で、100倍の開きがある。**

受益は輸送量で決まるため、乗る人が増えなければ貸付料も増えない。開業が新しい区間ほど、おおむねこの比率は低くなる。

JR北海道は小委員会に、新函館北斗の開業に伴う受益はマイナスで、それが定常的になっていると書面で伝えている。

30年分の貸付料は事業費の何%にあたるか

出典:国土交通省 同参考資料の貸付料と事業費(認可額を含む)から本紙算出

2020年に前倒しで使われた3,500億円

31年目以降を「もう30年」とする結論には、先に置かれた前提がある。

2020年、北陸新幹線 金沢〜敦賀の工事費が増えたとき、その財源として高崎〜長野の31年目以降の貸付料収入が前倒しで使われた。置いた数字は年175億円の20年分、3,500億円だ。

この時点で、31年目以降の貸付制度も契約も存在していない。国交省の参考資料にも「仮置き」と明記されている。つまり3,500億円は、31年目以降も同じ水準の収入が入ることを前提に、すでに使われている。7月のとりまとめは、その前提と整合する内容になっている。

前提どおりにならなかった場合の行き先も、制度上は決まっている。貸付料で埋まらない分は、先の2対1に従って国費と地方負担に移るからだ。

一方、JR東日本は小委員会で、2026年3月に認可された運賃改定の原価計算上、2027年10月以降の高崎〜長野の貸付料を0円として置いていると説明している。

同じ175億円をめぐって、財源側と事業者側の前提が食い違っている。金額の交渉はこれからだ。

1兆円増える工事費の行き先

北海道新幹線の札幌延伸は、事業費が最大1兆2,000億円増えて3兆5,000億円規模になる見込みだ。開業も2038年度末以降にずれる。とりまとめも、北海道で1兆円を超える事業費増のおそれがあり、北陸と西九州を含めると全体で数兆円規模になると書いている。

ここで、区間ごとの比率がそのまま先行きになる。

  • 開業が新しい区間ほど受益は小さく、貸付料は事業費の数%にしか届かない
  • 期間を60年に延ばしても、年額175億円は変わらない
  • 増えた工事費は、国費と地方負担、または借入で埋めることになる

加えて、大規模改修は施設を保有するJRTTが責任を負うのが妥当だと整理された。50年目以降に来るその費用の出どころは、検討課題として残っている。

とりまとめは最後に、貸付料に限らない多様な形での財源確保策を検討すべきだとしている。

次の論点は「61年目以降」ではない。支払期間を延ばして財源をつくる余地は、今回で使い切った。増える工事費を貸付料の外側でどう受け止めるかに、議論は移る。

北海道新幹線 札幌延伸の事業費見通し

出典:鉄道・運輸機構試算(2025年、報道各社)。国と地方が2対1で負担する