独自分析
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造船シェア0.1%の米国が、日本に「船を造ってくれ」と言った

造船シェア0.1%の米国が、日本に「船を造ってくれ」と言った

冷戦後に300の造船所が閉じた米国が日本に造船協力を求めた。日本は官民1兆円の「倍増計画」で応じるが、造船の就業者は7.6万人に減り、9,500人が不足している

2026-07-09

0.1%

米国の商船建造シェア(2024年)

軍艦を造れなくなった米国

米国の商船建造シェアは0.1%だ。世界最大の海軍を持つ国が、自国で船を造る力をほぼ失った。

冷戦終結後、約300カ所の造船所が閉鎖された。大型軍艦を建造できる施設は全米で4カ所しか残っていない。

軍艦の建造計画も相次いで縮小された。

  • ズムウォルト級駆逐艦:32隻の計画が3隻で打ち切り
  • 沿海域戦闘艦(LCS):52隻が35隻に縮小
  • コンステレーション級フリゲート:20隻の計画が2隻で中止

中国海軍の艦船は395隻に達し、米海軍の280隻を上回った。建造速度は米国の4倍とされる。数の面で劣勢に立った米国は、同盟国に造船の協力を求め始めた。

米軍艦の建造計画と実績

米国防総省

造船シェア13%の日本に来た依頼

2025年10月、日米両政府は「造船に関する協力覚書」に署名した。造船能力の拡大、人材育成、先進技術の共同開発を進める枠組みだ。

2026年には作業部会の初会合も開かれた。米国は国防予算に造船関連で約18.5億ドル(約2,700億円)を計上し、日韓の造船所の活用を検討している。

日本の造船竣工量は世界3位で、シェアは約13%。中国の55.7%、韓国の約20%に次ぐ位置にある。

ただし中国の勢いは加速している。2024年の新規受注の71%を中国が占め、2026年1〜3月には85%に達した。「中国以外で船を造りたい」需要は存在するが、日本が受け皿になれるかは別の問題だ。

造船竣工量の世界シェア(2024年)

IHS Markit、国土交通省海事局

官民1兆円の「倍増計画」と現場の欠員

2025年12月、国土交通省は「造船業再生ロードマップ」を策定した。年間建造量を約900万総トンから2035年に1,800万総トンへ倍増する目標だ。

投資枠も整った。

  • 政府基金:3,800億円
  • 業界設備投資:3,500億円(大手17社)
  • 合計:官民1兆円超

業界再編も進む。今治造船がJMUを子会社化し、出資比率60%に引き上げた。2028年までに業界を1〜3グループに集約する計画だ。

しかし造船業の就業者は2016年の9万人超から7.6万人に減った。現場では9,500人の人材不足が報告されている。

常石造船はピーク時から稼働率を4割下げ、人材を確保しやすい海外拠点の拡充に動いた。「造りたくても人がいない」状態が広がりつつある。

日本の造船建造量と2035年目標

国土交通省「造船業再生ロードマップ」

9,500人の不足は埋まるか

外国人材は増えている。造船分野の特定技能1号は8,182人(2024年3月時点)で、コロナ禍からの回復が進む。だが9,500人の不足を埋めるには足りない。

自動化の余地もある。日米首脳会談で造船のAI・ロボット活用が合意に含まれた。ただし溶接やブロック組立の自動化は道半ばで、2035年までに大幅な省人化が実現するかは見通せない。

経済安全保障の観点から、中国に頼らない船舶調達は各国の課題になっている。日本が代替の造船拠点になれるかは、設備ではなく人の確保で決まる。

1兆円の投資と米国からの依頼はそろっている。だが毎年人が減る産業で生産量を倍にするには、賃金の引き上げと技能訓練の拡充が設備投資と同時に進む必要がある。造船「倍増計画」の成否は、船台の数ではなく、そこに立つ人の数にかかっている。