独自分析
衆院定数削減比例代表サンラグ式ドント式選挙制度協議会
衆院定数45減で浮くのは年34億円。国の予算の0.003%だ

衆院定数45減で浮くのは年34億円。国の予算の0.003%だ

削減額より大きく動くのは比例の議席。割る数を1、3、5に変えるサンラグ式も浮上している

2026-08-24

0.003%

45議席削減で減る国の支出の割合

45議席分の公費はいくらか

与党が秋の臨時国会での成立を目指す法案は、衆院比例代表の定数を176から131へ、45減らす内容だ。 削減の根拠としてまず挙がるのは、議員にかかる公費である。

1人あたりの費用は、公表資料から積み上げられる。

  • 歳費:年2,181万円(月129.4万円と期末手当)
  • 調査研究広報滞在費:年1,200万円
  • 立法事務費:年780万円
  • 公設秘書3人分などを含めた総額:年7,500万円前後

45人分で年34億円ほど。2026年度の一般会計予算122兆3,092億円に対して、0.003%にあたる。

**10万円の支出のうち、減るのは3円ほどだ。**

定数はすでに段階的に減ってきた。1994年の制度改正時が500議席、2000年に480、2014年に475、2017年から465。45減が通れば420になる。 人口100万人あたりの衆院議員数は現在3.8人で、OECD加盟38カ国のうち36番目。削減は、この数字をさらに下げる方向に働く。

衆院定数の推移と45減案

出典:総務省、衆議院の公表資料をもとに作成

比例176を131にしたときの配分

効き目が大きいのは、金額より議席のほうだ。 定数を減らすと、比例の配分は大きい党に寄る。現行のドント式が、定数が小さいほど大政党に有利に働くからだ。

チームみらいが2月衆院選の比例票で試算したところ、176を131にした場合の内訳はこうなった。

  • 与党:94議席 → 75議席(19減)
  • 野党:82議席 → 56議席(26減)

45議席のうち26が野党側から出る計算で、与党が比例で占める割合は53.4%から57.3%へ上がる。 ブロック別の減り方も一様ではなく、四国は6議席から4議席へと3分の1が消える。

得票が1票も動かなくても、器を小さくするだけで勢力比は動く。

比例176を131にした場合の議席(2月衆院選の比例票で試算)

出典:チームみらいの試算(ドント式)

1、2、3で割るか、1、3、5で割るか

もう一つ、議席の決まり方そのものを変える案が協議会に出ている。比例の配分に使う割り算を、サンラグ式に替えるものだ。

  • ドント式:得票を1、2、3…と自然数で順に割る
  • サンラグ式:得票を1、3、5…と奇数で割る

割る数の間隔が広がるぶん、大政党の2議席目や3議席目より、小さい党の1議席目が先に来やすくなる。

西日本新聞が同じ2月衆院選の比例票で試算した結果は、こうなっている。

  • 自民党:9減の58議席
  • 中道改革連合:6減
  • 国民民主党:1減
  • 日本維新の会とチームみらい:変わらず
  • れいわ新選組:5増
  • ほかに小政党5党が議席を増やす

提案したのはチームみらいで、ニュージーランドやスウェーデン、ノルウェーの国政選挙で使われている方式だという。 45減とは逆向きに働く案が、同じテーブルに載っていることになる。

サンラグ式に替えた場合の比例議席の増減

出典:西日本新聞の試算(2月衆院選の比例票)

9月に決まるのは45減かサンラグ式か

与野党協議会の座長試案は8月に修正され、定数は「削減を求める民意等を踏まえ、適切な規模の削減を行う」となった。具体的な数は入っていない。 結論の時期は、2025年国勢調査の確報値が出る9月をめどとしている。

二つの案は、議席の動く向きが逆だ。

  • 比例45減:小さい党の議席が先に消える
  • サンラグ式:小さい党に議席が回りやすくなる

45減だけが通れば、与党の比例シェアは4ポイント近く上がる。 サンラグ式だけなら、自民党が9減、れいわ新選組が5増など、十数議席が大政党から小政党側へ移る。 両方が入れば向きは打ち消し合い、勢力比の変化は小さくなる。

公費の34億円は、どの組み合わせでも変わらない。 9月に見るべきなのは、45という数字ではなく、二つの案のどちらが単独で通るかだ。