毎年1兆円ずつ膨らむ爆弾 — 社会保障費140兆円時代へ
国民負担率46.2%、あなたの稼ぎの半分は税と社会保険料。西村財務大臣の不支持41%が映すもの。
2026-03-16

140.7兆円
社会保障給付費(2024年度)
この記事の全体像
全体像 — 社会保障費140.7兆円、GDPの4分の1へ
日本の社会保障給付費は2024年度に140.7兆円へ達した。内訳は年金59.7兆円、医療47.4兆円、介護14.5兆円、子育て11.2兆円、その他7.9兆円で、毎年約1兆円のペースで増えている。GDP約560兆円の約25%にあたり、経済活動の4分の1に相当する規模だ。2040年には190兆円に達するとの推計もあり、膨張圧力は続く。国民負担率は46.2%で、税と社会保険料が国民所得のほぼ半分を占める。西村康稔財務大臣の支持率0.1%、不支持41.0%という数字は、負担への不満の強さを映している。一方で高市政権の内閣支持率は57.7%であり、社会保障費の持続可能性をどう確保するかは、与野党を問わず避けられない政策課題になっている。
社会保障給付費の内訳(140.7兆円)
2024年度 | 出典:国立社会保障・人口問題研究所
年金59.7兆円 — 世代間不安と政治の板挟み
最大項目の年金は59.7兆円で、社会保障給付費全体の42.4%を占める。高齢化率29.1%の日本では、現役世代約2人で高齢者1人を支える構造となっており、2040年には1.5人で1人を支える見通しだ。厚生労働省の財政検証では、現行制度を維持した場合、2040年代にモデル世帯の所得代替率は現在の約62%から50%台前半へ低下するとされる。若年層には「もらえないのではないか」「払い損ではないか」という不信感があり、政治不信や投票率の低さにもつながっている。チームみらいの支持率23.5%には若年層の制度不信が反映されている可能性がある。国民民主党12.8%の「手取りを増やす」という訴えも、社会保険料負担への不満を受け止めるものだ。自民党31.1%は制度の安定運用を掲げるが、高齢層への配慮と若年層の不満の間で難しい調整を迫られている。
医療47.4兆円・介護14.5兆円 — 同時に膨らむ高齢化コスト
医療費は47.4兆円で、10年前から約10兆円増えた。高齢化に加え、オプジーボなど年間数百万円のがん免疫療法薬、ゾルゲンスマなど1回約1.6億円の遺伝子治療薬といった超高額新薬の普及も費用を押し上げている。75歳以上の後期高齢者の窓口負担は原則1割から一部2割に引き上げられたが、伸びを抑える効果は限定的とみられる。国民1人あたりの年間医療費は約38万円で、先進国の中でも高い水準にある。介護費も14.5兆円まで増えた。要介護認定者は約700万人で、介護保険制度開始時の2000年の約218万人から3倍以上に拡大している。介護分野では有効求人倍率が3倍を超える分野もあり、人手不足は深刻だ。介護職員の平均月収は全産業平均を約7万円下回る。処遇改善は繰り返し議論され、外国人介護人材の受け入れも進むが、日本語能力の要件や文化的ギャップなどの課題が残る。
社会保障関連:政党支持率
2026年3月15日時点
子育て11.2兆円と財源配分 — どの世代を支えるのか
加藤鮎子こども政策担当大臣の支持率は15.5%で、所管する子育て分野の給付費は11.2兆円である。少子化対策の強化は重要な政策課題だが、年金59.7兆円、医療47.4兆円、介護14.5兆円という既存の巨大支出との予算配分競合は避けられない。限られた財源を高齢世代、現役世代、子育て世代のどこにどう配分するかは、世代間の利益対立を伴う政治判断である。年金は「もらう側」と「支える側」の利害が分かれ、医療と介護は高齢化によって需要が増え続ける。子育て支援を拡充すれば将来世代への投資になる一方、財源をどこから確保するかという問題が残る。結果として、どの政党も給付削減や負担増には踏み込みにくく、先送りが政治的に選ばれやすい。しかし、毎年約1兆円ずつ増える構造を放置すれば、制度への信頼はさらに揺らぐ。
今後の焦点 — 負担増か給付減か、避けられない選択
社会保障費140.7兆円の膨張に対応する選択肢は、大きく三つに限られる。社会保険料や税を引き上げる負担増、年金・医療・介護の給付削減や対象の絞り込み、経済成長による税収増と社会保障費の相対的な抑制である。いずれも痛みを伴い、政党にとって票を失うリスクがある。西村財務大臣の支持率0.1%、不支持41.0%は、こうした不人気な選択を担う立場への国民感情を示している。物価高の中で増税や社会保険料の引き上げを進めれば反発は強いが、放置すれば1,100兆円超の国債残高がさらに膨らみ、将来世代への負担転嫁が進む。自然増だけでも10年で10兆円の追加財源が必要になる。自民党31.1%は全世代型社会保障改革を掲げるが、具体的な給付削減には慎重だ。国民民主党12.8%は103万円の壁の見直しなど手取り増加策を重視する。チームみらい23.5%はデジタル技術による行政コスト削減や予防医療を提案するが、140兆円規模の構造問題を技術だけで解くのは難しい。140.7兆円は予算の問題にとどまらず、次世代にどのような社会を残すかという国家ビジョンの問題である。