独自分析
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交通空白は1年で683地区増えた。人口5万人未満の町の84%に交通の担当者はいない

交通空白は1年で683地区増えた。人口5万人未満の町の84%に交通の担当者はいない

日本版ライドシェアは許可枠14,120台のうち2,413台しか動いていない。損失は年10兆円で、その6割は家族の送迎に消える時間だ

2026-09-15

84%

人口5万人未満の市町村で地域交通の専任担当者が不在

交通空白は2,740地区。1年で683増えた

国土交通省が2026年6月10日に公表した「『交通空白』解消に向けた取組方針2026」に、全国の集計が載っている。

対応が必要な「交通空白」地区は2,740地区。そこに1,720万人が住み、面積は11万5,737平方キロと国土のおよそ3割にあたる。前年調査の2,057地区から、1年で683地区増えた。

増えた中身はこうだ。

  • 新たに把握された地区:547地区
  • 回答した市区町村:1,705(前年から102増)

路線が新たに廃止された分より、これまで数えていなかった場所を数え始めた分のほうが大きい。国交省も、リストアップの多い自治体は分析が細かいだけで取組が遅れているわけではない、と注記している。

対策も動いてはいる。前年に挙がった2,057地区のうち、着手済みの「実施中」は548地区から1,300地区に増えた。

問題は、数え上げた先に用意された手段が、現場の形に合っているかどうかだ。

「交通空白」地区と「要モニタリング」地区の数

出典:国土交通省「『交通空白』解消に向けた取組方針2026」(2026年6月10日)

許可枠14,120台のうち、動いたのは2,413台

2024年4月に始まった日本版ライドシェアは、タクシー会社が運行主体になる制度だ。内閣府の規制改革推進会議に出た資料では、国が認めた枠14,120台に対して実際に動いたのは2,413台、稼働率は17.1%にとどまる。

稼働率は京都で6%。呼んでも車がつかまらないマッチング不良の割合は、神奈川で53%、愛知で62%に達する。日本経済新聞は、2026年度以降に必要な台数が大都市12地域で解禁時より86%少なく算出されたと報じている。

都市のタクシー不足を補うために設計された制度が、その都市で使われていない。

地方の受け皿になっているのは、自治体やNPOが運行する公共ライドシェアのほうだ。取組方針2026は運行主体を都道府県や第三セクターにも広げ、複数市町村での共同導入を支援するとした。

急ぐ理由は担い手にある。日本バス協会の試算では、2030年度のバス運転者は9万3,000人で、必要数に3万6,000人届かない。宮城交通は8月末、運転士不足を理由に仙台圏の4路線92便を廃止すると発表した。

日本版ライドシェアの許可枠と稼働車両

出典:内閣府 規制改革推進会議提出資料

損失10兆円の6割は、家族の送迎で消える時間だ

移動の手段が細っていく間、そのコストは誰が払っているのか。EY Japanは2026年7月9日、交通空白による経済・社会的損失を年間約10兆円と試算した。国交省によれば、この損失を金額で示した試算は初めてだという。

内訳は大きく偏っている。

  • 家族送迎による可処分時間の喪失:約5.8兆円
  • 観光消費の機会損失:約2.3兆円
  • 日常消費の機会損失:約1.2兆円

6割近くが、通院や通学の送迎に費やされた時間だ。取組方針2026は、送迎が週に数時間から10時間程度に及ぶケースも少なくないとしている。

送迎は朝夕に発生するため、空いた時間が細切れになり、働ける時間そのものが削られる。負担は現役世代の女性に偏る傾向が強いとも指摘されている。

交通空白のコストは、バス会社の赤字として計上される前に、家庭の時間として支払われている。子どもの学びや体験の機会、不動産価格、少子化への影響は、この10兆円には入っていない。

交通空白による年間損失の内訳

出典:EY Japan試算(2026年7月9日公表)

予算は3.6倍。ただし84%の町に専任がいない

この損失に対して、予算は積み増されている。2027年度の概算要求で交通空白の解消は835億円、前年度比3.6倍になった。国交省全体の要求額は8兆7,694億円だ。

ただし、金額が増えることと、それを使い切れることは別の話になる。

取組方針2026の脚注に、令和6年度の地域交通行政調査の数字がある。人口5万人未満の市町村の84%で、地域交通の専任担当者が不在だ。

補助金は、計画を書き、協議会を開き、事業者と調整して初めて届く。専任がいなければ、その入口で止まる。

支援の重心が動いているのはそのためだ。計画づくりを代行する連携促進団体の立ち上げ、都道府県による広域調整、複数市町村での共同導入。ただし共同導入が本格運行まで進んだのは、茨城県のつくば市など4市の例にとどまる。

集中対策期間は2027年度(令和9年度)までの残り2年。この間に地域差を生むのは要求額ではなく、835億円を申請して回す人が役場にいるかどうかだ。