水道管の4本に1本が寿命超え。全部の交換に130年かかる
経年化率23.6%に対し更新率0.64%。96%の事業体が値上げを迫られるが、人口減少下の独立採算制がインフラ更新を構造的に困難にしている
2026-06-21
130年
全管路の更新に要する年数(現行ペース)
「130年更新」の算数
全国の水道管は約74万km。地球を18.5周する距離だ。
このうち法定耐用年数の40年を超えた管路が23.6%、約17.6万kmに達した(国土交通省、2022年度)。高度成長期に一斉に敷設された管が、いま一斉に寿命を迎えている。
年間の漏水・破損事故は2万件を超える。だが更新のスピードが追いついていない。
2022年度の管路更新率はわずか0.64%。年間約4,800kmしか交換できていない。単純計算で全管路の更新には130年以上かかる。
経年化率は加速している。2006年の6%が2022年に23.6%へ。国土交通省の試算では、このペースなら2032年に約40%、2042年には約69%に達する。
水道管の経年化率の推移と将来推計
出典:国土交通省(2032年・2042年は同省試算)
96%の事業体が値上げを迫られる
EY Japanと水の安全保障戦略機構の共同研究(2024年)が、全国1,243の水道事業体を分析した。
結果は次のとおりだ。
- 96%(1,199事業体)が料金値上げを必要としている
- 平均値上げ率は48%
- 月額水道料金の全国平均:3,317円 → 4,895円へ
- 自治体間の料金格差:現在8倍 → 2046年度に20.4倍へ
財務総合政策研究所はさらに踏み込む。更新費用を使用料だけで賄うなら、平均8割の引き上げが必要だ。月4,000円の家庭なら7,200円になる。
2024年度に水道料金を改定した自治体は延べ170超。過去10年で最多の数字だ。
水道料金の値上げ見通し(月額)
出典:EY Japan・水の安全保障戦略機構、財務総合政策研究所
独立採算が生む逆回転
水道事業は独立採算が原則だ。使用料収入で設備投資も人件費も賄う。人口が増え使用量が伸びる時代には、この仕組みが回っていた。
人口減少局面では逆に回る。利用者が減ると収入が減る。投資余力がなくなり更新が遅れる。遅れを取り戻すために値上げすると節水が進み、使用量がさらに減る。
全国の水道事業者の約6割が採算割れの状態にある(総務省)。職員数もピーク時から約30%減り、技術の継承も難しくなっている。
とくに給水人口5万人未満の小規模事業体は深刻だ。約6割が30%以上の値上げを見込まれている。同じ国に住みながら水道料金が20倍異なる──2046年にはそうした状況が現実になり得る。
「独立採算の境界」が問われている
国土交通省は2026年度に「重要水道管路更新事業」として320億円の補助制度を新設した。近隣自治体との広域連携で管路点検や浄水施設の統合を促す方針だ。
ただし320億円は全管路更新に必要な投資額に対して桁が足りない。隣の自治体も財政難であれば、統合のメリットも限定的になる。
水道管は地中にある。見えないから後回しにされてきた。だがこの16年で経年化率は4倍に膨らんだ。
問われているのは「いくら値上げするか」ではない。水道を受益者負担のサービスと見るか、社会的共通資本と見るか。独立採算と一般財源の境界をどこに引き直すかが、更新の速度を左右する。